技術コラム
2026.03.05
雰囲気熱処理の可能性。品質向上から研究開発・耐久試験まで
目次
雰囲気熱処理とは
雰囲気熱処理は、「水素」「窒素」「アルゴン」などのガスを炉内に充填し、金属表面の酸化を防ぎながら加熱を行う熱処理手法です。 一般的には、金属内部の不純物を除去し、部品の特性を向上させ、製品の高機能化を目的とした工程として広く知られています。しかし、雰囲気熱処理が持つ可能性はそれだけにとどまりません。ガスや温度の条件を細かく調整することで、製品の耐久試験から新素材の研究開発まで、多岐にわたる課題解決に応じることが可能です。
あらゆる使用環境の再現と耐久試験への応用
雰囲気熱処理の技術を応用すれば、製品が実際に使用される特殊な環境を人工的に作り出すことができます。 例えば、使用中に高温となり、かつ還元性雰囲気に晒される製品の状況を炉内で再現し、耐久試験を行うことが可能です。想定される排出ガスや複数の混合ガスを用いた熱処理のほか、ガスの水分量(露点)を意図的に調整することで、あらゆる環境下をシミュレーションできます。あえて水分量の多いガスを用いて酸化被膜を形成する「ウエット水素処理(酸化皮膜処理)」などもその一例です。
さらに、最大100時間以上に及ぶような長時間の処理にも対応可能です。試験中に発生する排出ガスは、水中へバブリングして排気するなどの工夫により、安全に作業・実験を行うことができます。
混合ガスとガス混合器を活用した精密な雰囲気制御
熱処理の現場では、窒素やアルゴンをベースガスとして、水素や酸素を任意の割合で混合させることが可能です。
- メーカー別注ガスボンベの場合
割合は「0.1:99.9」から指定可能ですが、納品までに4週間程度の納期が必要となります。
- ガス混合器を使用する場合
処理の途中でガスの比率を柔軟に変更することも可能です(※別途、混合器の製作が必要となります)。
<ガスの使用条件の一例>
- ボンベを使用する場合
- 流量:5L/min~
- 圧力:0.1~0.6Mpa程度
- ※高濃度酸素や一酸化炭素など、一部のガスは炉体の耐久性や排気設備の有無により使用できない場合があります。
- ガス混合器を使用する場合
- 比率例:窒素99:水素1
- 流量例:合わせて10L/min(例:9:1の割合など)
- 圧力:0.2Mpa(※圧力は一定に保たれます)
※ガス混合器は、ガスの種類、流量、圧力によって、別途製作する必要があります。
温度・時間・冷却速度の組み合わせによる研究開発支援
部品の実際の使用環境に近い空間を作り出すことができるため、素材の組成変化や内部組織の分析といった研究開発に非常に適しています。処理温度と保持時間を細かく組み合わせることで、どのような条件下でも再現が可能になります。
- 研究開発のシミュレーション例①:組成変化の比較
水素雰囲気下とアルゴン雰囲気下において、それぞれ「800℃・72時間処理」を実施し、組成変化を比較。炉内の配置(材質の上下)による違いなども確認します。
- 研究開発のシミュレーション例②:内部組織・磁気特性の分析
還元性雰囲気下と窒素雰囲気下における内部組織の変化を分析。例えば「850℃・3時間保持」で処理した後の磁気特性を比較します。
- 冷却速度のコントロール:
加熱時だけでなく、冷却速度を細かく調節することによる金属特性の変化なども確認できます。
このように、単に材質の特性を上げるだけでなく、従来とは異なる熱処理条件を意図的に再現することで、「製品に最適な推奨熱処理条件」を導き出したり、異なる条件下で起こりうる事態を事前に作り出して予測・検証したりすることが可能になります。
熱処理・水素還元技術ナビの雰囲気熱処理の事例
次に、熱処理・水素還元技術ナビが実際に行った雰囲気熱処理の事例をご紹介いたします。
熱処理事例①:粉末の熱処理


こちらは粉末の熱処理事例になります。
粉末から部品をつくる技術として主なものは、粉末冶金(金型に入れて圧縮成形する技術)焼結(高温加熱することで粒子同士が結合し合金化すること) MIM(MetalInjectionMoldingを略したもので射出成型を意味します)などがあげられます。
粉末冶金技術から3Dプリンタの技術へ繋がり、 粉末の研究開発がより一層、進んでいます。研究開発段階での粉末は複数の原料を組み合わせているため、その目的により・・・
熱処理事例②:脱炭処理(ウェット&ドライ水素雰囲気熱処理)


こちらは、脱炭処理(ウェット&ドライ水素雰囲気熱処理)を行った熱処理事例です。
水分量の多い水素ガス(プラス露点の水素)専用の設備などを使用し、この雰囲気中で一段階目の熱処理を行います。
そして二段階目でドライ水素(露点マイナス40℃以下の水素)で還元処理を行うのが一連のウエット&ドライ水素熱処理になります。
このときの一段階目で・・・
熱処理事例③:希土類金属の雰囲気熱処理
まとめ
雰囲気熱処理は、量産品の品質向上だけでなく、未知の領域に挑む研究開発や、過酷な環境を想定した耐久試験の強力なツールとなります。特殊ガスを用いた試験や、精密な温度管理による実証実験をお考えの際は、ぜひ一度ご相談ください
■ 熱処理・水素還元技術ナビの特徴
熱処理・水素還元技術ナビは、難易度の高い精密部品の各種熱処理に対応可能な熱処理のプロフェッショナルです。一般的な焼鈍から、純水素・特殊ガスでの熱処理を、1個から最大100時間の長時間行うことができます。
近年注目されている金属粉末の水素吸蔵によるリサイクル処理についても対応可能です。
■ 研究・開発支援実績が多数
熱処理・水素還元技術ナビを運営しておりますサーマル化工では、研究開発の試験案件を事業の核と考えており、本日に至るまで各業界のメーカー様をはじめとして様々な研究・開発支援を行ってきました。
正確な昇温、安定した保持時間、築炉よる緩やかな降温など試験目的によって、ご希望沿ったヒートパターンのご提案が可能です。
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