技術コラム
2026.02.16
水素脆性(水素脆化)とは?水素脆性を利用する雰囲気熱処理技術についてもご紹介!
目次
金属の熱処理において「水素脆性(水素脆化)」は一般的に、材料を脆くさせ、予期せぬ破壊を招く「避けるべきトラブル」として知られています 。しかし、この特性を逆手に取り、高度な制御技術によって材料の再生やリサイクルに活用するのが、希土類金属などの水素吸蔵金属の雰囲気熱処理です。
本記事では、水素脆性の基礎知識から、水素吸蔵金属の雰囲気熱処理について詳しく解説します。
水素脆性(水素脆化)とは?
水素脆性とは、鋼材などの金属が水素を吸収することで延性や靭性が低下し、脆くなる現象を指します 。
- 発生のメカニズム
金属、特にチタンやレアアースなどの水素吸蔵合金を水素雰囲気下で加熱すると、微細な水素分子が内部へ透過し、結晶構造の中に入り込みます 。
- ハイドライド現象(水素化)
金属原子と水素が結合し、「金属水素化物(ハイドライド)」を形成することで、材料が極めて脆い状態になります 。
- 遅れ破壊のリスク
通常の製品加工においては、見た目の変化がないまま突然割れが生じる「遅れ破壊」の原因となるため、徹底した除去(脱水素)が求められるのが一般的です 。
「脆さ」を武器に変えるレアアースのリサイクル技術
ネオジム、チタン、タンタル、ニオブといったレアアース(希土類金属)は、製品の性能を飛躍的に向上させる素材として欠かせない存在です 。しかし、使用済み製品からの回収や加工工程において、不純物の混入や表面の酸化が避けられず、これらをいかに効率よく除去して材料を「再生」させるかが大きな技術的課題となっています 。
通常、金属を脆くさせる「水素脆性(水素脆化)」は、製品の破壊を招くトラブルとして忌避される現象です 。しかし、サーマル化工ではこの特性を逆手に取り、水素を用いた雰囲気熱処理によって、不純物のないクリーンな素材状態へと戻すリサイクル技術を確立しています 。
水素化による粉砕と不純物除去のメカニズム
このリサイクル技術の核となるのは、水素吸蔵合金としての性質を利用した「ハイドライド(水素化物)現象」の制御です 。
- 脆化と自然粉砕:あえて材料に水素を吸い込ませることで、極めて硬いレアアースを意図的に脆化させます 。これにより、材料は自然に粉砕され、微細な粉体へと変化します 。
- 表面積の増大による効率化:粉体化することで材料の表面積が劇的に増大します 。この状態にすることで、金属内部の奥深くに閉じ込められていた酸化物や不純物が露出し、水素と反応しやすい環境が整います 。
- 高温純水素による還元:露出した不純物に対し、高温下で高純度の水素を供給することで、酸素を水蒸気(H2O)として効率的に除去・還元し、高純度な金属へと再生させます 。
希土類金属の雰囲気熱処理のおける当社のポイント
チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)といった材料は、熱処理中に水素を吸い込み溜め込む性質(水素脆性)が極めて強く、一歩間違えれば材料が粉状になったり、赤熱・発火するリスクを孕んでいます。当社の強みは、このリスクを排除するための緻密な「時間 × 流量」のコントロールにあります。材料内部に溜まった水素を時間をかけて安全に除去するため、独自の技術開発に基づいた置換プロセスを確立しています。
極限の還元力を生む「純水素」と露点管理
一般的な混合ガスでは到達できない、超高純度な還元環境を提供します。
- 「常に新鮮」を維持する常時フロー
ワーク(材料)は加熱されると、内部の酸化物を表面に析出させようとします。サーマル化工では、純度99.99999%の純水素を用いて、常時フローさせることで、析出した不純物と水素を即座に結びつけ、炉外へ排出します。
- 最適な露点管理
雰囲気の質は「水分量(露点)」で決まります。露点を -80°まで下げることで、ppm単位というナノレベルの酸化物除去を可能にしています。
| 露点の目安 | 処理の効果・対象 |
| 0° | 酸化皮膜処理などに使用 |
| -40° | 鉄の酸化防止、SUS430の標準処理 |
| -60° | SUS304、Ni基合金の光輝処理 |
| -80° | 極限の還元(PPM単位の不純物除去) |
段階的置換による安全・確実なプロセス
発火を防ぐため、いきなり水素を導入することはありません。まず窒素で炉内の空気を完全に追い出した後、水素へ置換する厳格な手順を徹底しています。処理終了時も同様に、水素を段階的に窒素へ置き換えることで、水素脆性を防ぎながら安全にワークを取り出します。この際、水素(反時計回り)と窒素(時計回り)で異なるバルブの締め方向に至るまで、微細な安全管理基準がマニュアル化されています。
ガス特性を熟知した現場判断
雰囲気熱処理は、水素やアルゴン、混合ガスなどのガスの種類で行います。水素は非常に軽いため置換に時間を要し、逆に窒素やアルゴン(Ar)は空気より重いため炉の下方に滞留しやすいという特性があります。サーマル化工では、これらガスの比重や挙動を熟知した熟練のオペレーターが、12基のピット型電気炉を駆使して「ガスの流れ」を統制します。ただ加熱するだけでなく、材料ごとに最適なガスの「道筋」を作ることで、希土類金属の最適な雰囲気熱処理を実現しています。
120時間の精密炉冷を支える圧倒的な設備力
ピット型電気炉12基を擁する設備群は、単なる「処理能力」以上の意味を持ちます。最大120時間にも及ぶ長時間処理や、-100°までの極めて緩やかな冷却コントロールは、雰囲気熱処理を熟知したサーマル化工だからこそ可能な領域です。
表面積が大きく、製造工程で水分や酸素を吸着しやすい「粉体材料」に対しても、「温度 × 時間 × 圧力・流量」の相関データを駆使することで、粒子の芯まで還元を浸透させます。この長年積み上げた物理データと高度な設備力が、目に見えない「ガスの動き」を完璧に支配し、お客様の求める究極の品質を実現します。
熱処理・水素還元技術ナビの雰囲気熱処理の事例
次に、熱処理・水素還元技術ナビが実際に行った雰囲気熱処理の事例をご紹介いたします。
熱処理事例①:粉末の熱処理


こちらは粉末の熱処理事例になります。
粉末から部品をつくる技術として主なものは、粉末冶金(金型に入れて圧縮成形する技術)焼結(高温加熱することで粒子同士が結合し合金化すること) MIM(MetalInjectionMoldingを略したもので射出成型を意味します)などがあげられます。
粉末冶金技術から3Dプリンタの技術へ繋がり、 粉末の研究開発がより一層、進んでいます。研究開発段階での粉末は複数の原料を組み合わせているため、その目的により・・・
熱処理事例②:脱炭処理(ウェット&ドライ水素雰囲気熱処理)


こちらは、脱炭処理(ウェット&ドライ水素雰囲気熱処理)を行った熱処理事例です。
水分量の多い水素ガス(プラス露点の水素)専用の設備などを使用し、この雰囲気中で一段階目の熱処理を行います。
そして二段階目でドライ水素(露点マイナス40℃以下の水素)で還元処理を行うのが一連のウエット&ドライ水素熱処理になります。
このときの一段階目で・・・
熱処理事例③:希土類金属の雰囲気熱処理
雰囲気熱処理のことなら、熱処理・水素還元技術ナビにお任せ!
雰囲気熱処理でお困りの際は熱処理・水素還元技術ナビでを運営しておりますサーマル化工株式会社までお気軽にお問い合わせください。
■ 熱処理・水素還元技術ナビの特徴
熱処理・水素還元技術ナビは、難易度の高い精密部品の各種熱処理に対応可能な熱処理のプロフェッショナルです。一般的な焼鈍から、純水素・特殊ガスでの熱処理を、1個から最大100時間の長時間行うことができます。
近年注目されている金属粉末の水素吸蔵によるリサイクル処理についても対応可能です。
■ 研究・開発支援実績が多数
熱処理・水素還元技術ナビを運営しておりますサーマル化工では、研究開発の試験案件を事業の核と考えており、本日に至るまで各業界のメーカー様をはじめとして様々な研究・開発支援を行ってきました。
正確な昇温、安定した保持時間、築炉よる緩やかな降温など試験目的によって、ご希望沿ったヒートパターンのご提案が可能です。
■ お客様からいただくよくある質問
実際にお客様からいただいたご質問のうち、特によくいただく質問をご紹介します!
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