技術コラム
2024.07.22
- 熱処理の基礎
雰囲気熱処理とは?雰囲気熱処理の概要や種類について解説!
目次
雰囲気熱処理とは
雰囲気熱処理とは「水素」「窒素」「アルゴン」などのガスを炉内に充填し、保護ガスとして熱処理を行う熱処理方法の一つです。特徴としては、金属表面を酸化から防ぎ、光沢感のある仕上がりとなることが挙げられます。
また、相対する熱処理としては大気中での熱処理が挙げられ、よく比較されるものでは真空熱処理が挙げられます。
雰囲気熱処理の種類
次に雰囲気熱処理の種類について解説していきます。
1.水素雰囲気熱処理
水素ガスと空気を置き換える「置換」方法によって、酸化を防ぎ熱処理を行います。
水素は還元性ガス(酸化の対義語)になりますので、酸化した(錆びた)金属の光沢感を取り戻すことが可能です。溶接の焼けあとや微量な酸化物除去なども可能で800℃から1100℃の高温の処理にも対応しています。
真空炉では敬遠されがちな粉末の処理が可能になり、あらゆる材質の還元処理が実現できます。
熱処理・水素還元技術ナビでは、「水素還元処理サービス」や「粉末の熱処理サービス」を行っております。
ご興味ある方は是非、下記ページをご確認ください!
2. 窒素雰囲気熱処理
窒素雰囲気は、不活性ガスで空気の約7割を占めています。液化までが超低温となり、-193℃で冷凍食品の保管などにも使用される馴染みのあるガスになります。熱処理においては、雰囲気形成以外に冷却ガスとしても使用されています。
水素と違い還元性はない為、変色した金属表面の光沢感を戻すことは出来ませんが、非鉄などの低温焼鈍や焼き戻しなどの安定化処理では酸化を防くことが出来るので、雰囲気熱処理では最も使用されているガスになります。
3. アルゴン雰囲気熱処理
「なまけもの」という意味のあるアルゴンガスも不活性ガスの一種です。窒素ガスに比べて高価になりますが溶接で使用することが多く、酸化を嫌う金属には適したガスと言えます。
特殊鋼の雰囲気として使用され、非燃性である特徴を活かし、チタンなどのガス吸蔵金属の熱処理にも使用されています。
雰囲気熱処理で”出来ること”
金属は温度還元をします。
※温度還元=物質を高温で加熱することによって還元反応を進行させるプロセス
溶解させた鉄が銀面に輝くのは温度による還元が理由です。温度の高い状態から冷えるときに酸素と結びつくため、表面が黒色に変化します。材料なら酸洗や化学研磨などで酸化被膜を除去することが可能ですが、部品になると寸法の変化やコストなど、精密部品になればなるほど、そのような方法では対処が難しい場合があります。
雰囲気熱処理ならば、最小限の寸法変化で済み、表面酸化による変色などは起こりません。
還元雰囲気炉であれば、同一の設備で「非鉄」「純鉄」の処理が可能になります。真ちゅうなどの処理を行うと、400℃前後で亜鉛が析出し、場合により炉内に残ってしまいます。
真空熱処理炉で真ちゅうの熱処理を行えないことはありませんが、同一設備でステンレスなどの処理を行うと亜鉛が部品に付着してしまう可能性があります。
これは熱処理の温度が違うために起こる現象で炉内にこのようなことが起こってしまうと交換修理となってしまい、莫大な費用と長期間の稼働停止となってしまいます。
しかい、還元雰囲気炉ならばそのようなことはありません。熱処理後に水素雰囲気で炉内を還元することが可能ですので、材質により制限を設ける必要性がございません。
雰囲気熱処理と粉末熱処理の関係性
雰囲気熱処理でなくては出来ない材質があります。それが「粉末」です。
真空熱処理炉は炉内の空気をポンプで引くことにより酸素のない炉内、真空をつくります。ご家庭でもある真空パック装置も同じ原理です。粉末を真空状態にしようとすると蓋で密閉していない限り、粉がポンプに目詰まりし故障の原因となってしまいます。
「粉末」の熱処理は雰囲気熱処理で行うことが一般的です。材質により使用するガスは異なります。
■ 水素:還元や磁気焼鈍、焼鈍などを粉末の状態から行う目的で行われています。
■ 窒素:高温で不純物や水分を除去する目的で使用されることがあります。
■ アルゴン:焼結金属の製造などで使用されています。金属以外の材質で使用されることもあります。
特に粉末の酸化物を除去するには、「窒素」→「水素」、「アルゴン」→「水素」といった二段階の方式で熱処理を行うことにより今までにない結果が出る可能性もあります。
「水素吸蔵合金」の粉末を「水素雰囲気」で熱処理を行うには十分な知見と少量での試験が必要となります。
熱処理・水素還元技術ナビを運営しておりますサーマル化工株式会社では、多種多様の試験実績がございます。ご協力出来る範囲で試験を行うことも可能です。
熱処理・水素還元技術ナビの雰囲気熱処理の事例
次に、熱処理・水素還元技術ナビが実際に行った雰囲気熱処理の事例をご紹介いたします。
熱処理事例①:粉末の熱処理
こちらは粉末の熱処理事例になります。
粉末から部品をつくる技術として主なものは、粉末冶金(金型に入れて圧縮成形する技術)焼結(高温加熱することで粒子同士が結合し合金化すること) MIM(MetalInjectionMoldingを略したもので射出成型を意味します)などがあげられます。
粉末冶金技術から3Dプリンタの技術へ繋がり、 粉末の研究開発がより一層、進んでいます。研究開発段階での粉末は複数の原料を組み合わせているため、その目的により・・・
熱処理事例②:脱炭処理(ウェット&ドライ水素雰囲気熱処理)
こちらは、脱炭処理(ウェット&ドライ水素雰囲気熱処理)を行った熱処理事例です。
水分量の多い水素ガス(プラス露点の水素)専用の設備などを使用し、この雰囲気中で一段階目の熱処理を行います。
そして二段階目でドライ水素(露点マイナス40℃以下の水素)で還元処理を行うのが一連のウエット&ドライ水素熱処理になります。
このときの一段階目で・・・
熱処理事例③:希土類金属の雰囲気熱処理
雰囲気熱処理のことなら、熱処理・水素還元技術ナビにお任せ!
雰囲気熱処理でお困りの際は熱処理・水素還元技術ナビでを運営しておりますサーマル化工株式会社までお気軽にお問い合わせください。
■ 熱処理・水素還元技術ナビの特徴
熱処理・水素還元技術ナビは、難易度の高い精密部品の各種熱処理に対応可能な熱処理のプロフェッショナルです。一般的な焼鈍から、純水素・特殊ガスでの熱処理を、1個から最大100時間の長時間行うことができます。
近年注目されている金属粉末の水素吸蔵によるリサイクル処理についても対応可能です。
■ 研究・開発支援実績が多数
熱処理・水素還元技術ナビを運営しておりますサーマル化工では、研究開発の試験案件を事業の核と考えており、本日に至るまで各業界のメーカー様をはじめとして様々な研究・開発支援を行ってきました。
正確な昇温、安定した保持時間、築炉よる緩やかな降温など試験目的によって、ご希望沿ったヒートパターンのご提案が可能です。
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