技術コラム
2024.07.01
- 焼鈍
- 熱処理の基礎
磁気焼鈍とは?磁気焼鈍の目的や磁気焼鈍に適した材質を解説!
目次
磁気焼鈍とは
磁気焼鈍とは、加工によって起こった内部歪み(磁化)を元に戻すことを目的に行う熱処理です。焼きなましと同じく材料を軟らかくすることが可能です。
応力除去焼鈍処理(見た目に分かる歪みとりなど)に対して、磁気焼鈍処理は全く見た目に変化はありません。
また、硬化処理(焼入れなど)に対して軟化処理(焼きなましなど)は熱処理会社の比率として9:1といわれているくらい、非常にニッチな熱処理になります。
磁気焼鈍では、処理温度と冷却時間のバランスをとることが重要で、変形や溶着を防ぐ手法を用いる必要があります。
熱処理・水素還元技術ナビが行う磁気焼鈍処理について、下記ページで詳しく解説しておりますので、是非合わせてご覧ください!
磁気焼鈍の目的
磁気焼鈍は、内部歪み(磁化)を元に戻すことを目的としていますが、それによりさまざまな分野における電子制御部品の機能を向上させることができます。
次世代自動車では走行距離や安全性能を上げるための特殊工程として小型化や省電力化が強く要望されています。
特に環境負荷低減には今以上に必要な工程のひとつといえるでしょう。
また、あらゆる製品の電動化が進み始めています。船舶、農機具、そして航空機に至るまでが、電動化の波の影響を受けています。
生活を支えるインフラ設備、次世代通信機器、医療電子機器と高性能かつ高精度、安全で正確な動作を要求する製品には、この磁気焼鈍による機能性の向上はなくてはならないものになっています。
磁気焼鈍の用途
磁気焼鈍の主な用途としては、下記が挙げられます。
- 車載用電装部品
- リレー鉄心
- 衝突安全センサー
- EV用部品
- モーター部品
- 電力センサー
- 音響部品
- ダイナミック型
- アーマチュア型のヘッドフォン
- 自動ドアや非接触型カードリーダー
- センサー部品
- 医療電子機器
- 補聴器(音響技術)
- 脳波計(センサー技術)
- 自家発電(省電力センサー)
- 無振動手術台(リニアモーター技術)
- インフラ関連
- スマートメーター(通信式電力、ガスメーター)
磁性材料とは
磁性材料とは磁場に対して何らかの反応をする材料になります。
大きくは「軟磁性材料」と「硬磁性材料」に分けられます。
軟磁性材料は鉄心、リレー、継鉄など電気を通して磁場中で作動する製品に使用されており、磁心材料ともよばれています。
硬磁性材料とは磁性を帯びると磁化し、本体が強力な磁石となり、永久磁石として使用されます。
軟磁性、硬磁性の呼び名のルーツですが、軟磁性は焼きなましをおこない、不純物をとばすことで特性があがることで使用され、硬磁性は焼き入れをおこなう硬い鋼を用いていたことから、区別されていました。
研究開発が進むにつれ、現在ではこの区別は無関係とわかりました。軟質、硬質の区別は保磁力の大きさで分けられます。
保磁力とは磁化された材料が反対向きの磁場にどれだけ抵抗できるかの数値です。数値が小さいとすぐ反応し、磁場がなくなると反応が無くなります。このことを軟らかいと表現し、保磁力が大きいことを磁気的に硬いと表現しています。
磁性材料で使用する基本的な値は磁場、磁束密度、磁化の強さの3つになります。
※磁束密度B(単位T):単位面積あたりの磁束を(密度)の値で、磁界の強さ=「磁束線の密度」のことを「磁束密度」といいます。
※透磁率μ(単位H/m):物質の磁化のしやすさを数値で表わしたもので、磁場で磁化されやすく、取り除くと戻りやすいものが軟磁性材料です。
※保磁力H(単位A/m):残留磁束密度Brをゼロにするのに必要な磁界の強さHを保磁力HCと呼び、数値が低いと優れた軟磁性材料といえます。
磁気焼鈍に適している材質
先ほど解説したように、磁気焼鈍は基本的に磁性材料と呼ばれる磁場に対して何らかの反応をする材料に対して行う熱処理になります。
下記の図は磁性材料マップと呼ばれる、各磁性材料が磁気焼鈍を行うことで、どの特性を向上できるかを簡易的に表している図になります。
上記の図のように、磁気焼鈍に適している材質は主に、パーマロイ、パーメンジュール、純鉄、ケイ素鉄、電磁ステンレスなどがあります。
目的に合わせて、適切な材質を選定することも重要ですが、あわせて各材料の特性を引き上げる適切な条件での熱処理の実施も重要です。
熱処理・水素還元技術ナビの磁気焼鈍事例
次に、熱処理・水素還元技術ナビが実際に行った熱処理事例をご紹介いたします。
熱処理事例①:パーマロイの磁気焼鈍
こちらはパーマロイの磁気焼鈍熱処理事例です。
Fe-Ni系磁性合金はパーマロイとよばれています。Fe-Ni合金の透磁率 が高いことを発見し、その後Fe-Ni合金の熱処理透磁率が非常に高くなることを発見したことから、・・・
熱処理事例②:純鉄の磁気焼鈍
こちらは純鉄の磁気焼鈍事例になります。
電子部品に使用されているは磁性材料(磁石にくっつく材質)は磁場中では磁力を持ち、それが無くなると元に戻る性質があります。
これを利用したのが電磁石で、多くの電子部品、製品に使用されています。部品加工によって磁化することを・・・
熱処理事例③:電磁鋼板の磁気焼鈍処理(窒素雰囲気熱処理)
熱処理事例④:パーメンジュールの磁気焼鈍
こちらの製品は、パーメンジュールの磁気焼鈍事例になります。
パーメンジュールは鉄とコバルトを1:1の割合で混合した合金です。
49Fe-49Co-2Vは軟鉄強磁性合金で、高い磁束飽和密度が特長です。
※磁束密度が高いとは、面積あたりの磁力が強いことを意味します。
これにより、小さな部品で大きな力を発揮し、製品の小型化に貢献できます。実際、パーメンジュールは・・・
熱処理事例⑤:電磁ステンレスの磁気焼鈍
こちらは電磁ステンレスを磁気焼鈍した熱処理事例です。
電磁ステンレス鋼はクロムを10~20%含むフェライト系ステンレス鋼をベースとしてシリコンやアルミニウム等を適量添加することにより安定した磁気特性や高固有抵抗を得られる材質です。
用途は非常に広範囲で、軟磁性材料として使用されるため応答性が良く、少ない電力で高い駆動力が得られる材料です。
具体的には・・・
熱処理事例⑥:フェライト系ステンレスの磁気焼鈍処理
こちらはフェライト系ステンレスの磁気焼鈍処理の事例です。
フェライト系ステンレスには、ステンレス鋼とSUS430などが代表的ですが、JIS規 格には磁気特性の規定がありません。
このため、磁気的な特性要求が緩い場合は、汎用のSUS430が用いられていることもありますが、高精度な制御が必要な機器向けには、磁気特性の厳しい品質管理が求められるため磁気焼鈍部品として使用されることはあまりありません。
一方で、フェライト系ステンレスは軟磁性材料よりも熱処理後の硬度があり・・・
熱処理事例⑦:ナノ結晶磁性体の磁気焼鈍処理
こちらは、ナノ結晶磁性体の磁気焼鈍処理事例になります。
ナノ結晶を含むアモルファス合金は、軟磁性材料としての特性を持っています。フェライト材料と比較すると、透磁率が3倍、飽和磁束密度が2.5倍となり、小さなサイズで大きなインダクタンスを実現します。
この特性は、電子回路において電圧を制御し、ノイズを除去して電流を安定させるなど、電子機器において重要な役割を果たしています。 技術的には、電気機器の小型化や損失の低減に貢献しており・・・
熱処理事例⑧:アモルファス合金の磁気焼鈍
こちらは、アモルファス合金の不活性ガスによる雰囲気熱処理の事例になります。
アモルファス合金のアモルファスとは、原子や分子が不規則に密集している状態のことを指します。
特に、アモルファス合金の組成には以下のものがあります:「Fe、Co、Niなどの3d強磁性遷移元素」と「Si、Bなどのガラス化元素」はリボンや細線に、 「Fe、Co、Niなどの3d強磁性遷移元素」と「Zr、Ti、Nb、Taなどの遷移金属」は薄膜形成に使用されます。
これらは、結晶構造が形成される前に・・・
磁気焼鈍のことなら、熱処理・水素還元技術ナビにお任せ!
磁気焼鈍でお困りの際は熱処理・水素還元技術ナビでを運営しておりますサーマル化工株式会社までお気軽にお問い合わせください。
■ 熱処理・水素還元技術ナビの特徴
熱処理・水素還元技術ナビは、難易度の高い精密部品の各種熱処理に対応可能な熱処理のプロフェッショナルです。一般的な焼鈍から、純水素・特殊ガスでの熱処理を、1個から最大100時間の長時間行うことができます。
近年注目されている金属粉末の水素吸蔵によるリサイクル処理についても対応可能です。
■ 研究・開発支援実績が多数
熱処理・水素還元技術ナビを運営しておりますサーマル化工では、研究開発の試験案件を事業の核と考えており、本日に至るまで各業界のメーカー様をはじめとして様々な研究・開発支援を行ってきました。
正確な昇温、安定した保持時間、築炉よる緩やかな降温など試験目的によって、ご希望沿ったヒートパターンのご提案が可能です。
■ お客様からいただくよくある質問
実際にお客様からいただいたご質問のうち、特によくいただく質問をご紹介します!
■ 熱処理の基礎ハンドブックを無料プレゼント中!
熱処理の基礎が分かるハンドブックを無料プレゼントしております。ご興味ある方は是非ご覧ください!
■ 熱処理でお困りの際はお気軽にご相談ください!
熱処理のことでお困りの際は、熱処理・水素還元技術ナビにお気軽にご相談ください!