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技術コラム

2024.08.30

【熱処理トラブル】焼鈍(焼きなまし)における溶着の原因と対策とは?

目次

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溶着とは

熱処理における「溶着」とは、主に金属材料の加工中や熱処理過程で、材料同士が高温で接触した際に表面が溶け合い、意図せず一体化してしまう現象を指します。

特に高温の環境下では、材料表面が互いに接触することで、原子レベルでの拡散や合金化が生じてしまう可能性があります。溶着が起きてしまうと、材料同士の分離が困難になり、最悪の場合、溶着してしまった製品は加工からやり直す必要などが発生してしまいます。

金属同士の表面を合わせて熱処理を行う場合、質量が大きければ大きいほど、面積が広ければ広いほど溶着は起こりやすくなります。特に焼鈍する材質のほとんどは膨張するものが多く、部品同士が密接していると溶着の原因となります。

焼鈍(焼きなまし)における溶着の原因

次に焼鈍(焼きなまし)における溶着の原因について解説していきます。

最も多い要因は金属表面についた「不純物」が考えられます。

 

続いて考えられる要因は部品加工などで発生する「バリ」です。ある程度のサイズや厚みがあるものは、バレルや化学研磨でなめらかに仕上げることが出来ますが、精密部品となるとその技術は格段に困難になり、数ミクロンのバリでも溶着の要因となる場合もございます。

この問題を解消にするには、部品発注側、加工会社、熱処理会社の連携が取れていることが重要になります。熱処理・水素還元技術ナビでは、発注企業様の求める品質に合わせて、発注企業様と加工業者様の間に立ち、密なコミュニケーションを取り、高い品質で製品を納品させていただきます。

純鉄の応力除去

  

焼鈍(焼きなまし)における溶着の対策

まず前提として、溶着を完全に防ぐこと(溶着が発生する可能性を0にすること)は難しいと考えます。

最もオーソドックスな手法としては、アルミナ(Al2O3)粉末を塗布するという方法です。アルミナ粉末はセラミックの材料で耐火性に優れているため熱処理では、よく使用されています。

ただしアルミナ粉末使用後は、粉末を完全除去するために再度洗浄を行う必要があります。一部の熱処理設備では、この粉末が故障の原因になる場合もあるため、取り扱いには注意が必要です。

 

また、製品が平坦なものであれば、セラミックペーパーを使用するという方法もございます。効果はありますが、再利用が難しいため(破けるため)高コストにつながってしまうという懸念点があります。

 

次にご紹介する方法は、溶着防止剤を塗布し、熱処理で表面を覆うという方法です。

ただし、この方法では焼鈍などの温度より低い条件で行う必要があるため、熱処理を2回行うことになります。また、表面状態が変化するので目視検査の承認を得る必要性が出てきます。

 

最後にご紹介するのが、熱処理治具の材質を変えるという方法です。石英(ガラス)アルミナ(セラミック)カーボンなどが耐火性に優れており、熱処理の治具として最適です。懸念としては、各部品に合わせてつくるとなると、成型技術の難しさもあり、高額になる点が挙げられます。

 

熱処理・水素還元技術ナビが取り組む溶着対策

熱処理の前処理として、製品の整列について、大量のロットならば機械を用いることでもできますが、多品種少量の場合は、一点ずつ「手作業」で行う必要があります。

アルミ6063 応力除去

熱処理・水素還元技術ナビを運営しておりますサーマル化工株式会社では創業から人の知恵と経験で部品ごとの整列方法、それに必要な治具、機械を使用して精密部品の処理を行ってきました。

お客様ごとに最適な方法をご提案させていただきます。もし溶着で歩留まり改善をご希望でしたら、まずは一度ご相談下さい。下記リンクにて、その他、当社が選ばれる理由を紹介しております。是非こちらも合わせて、ご覧ください。

>>「当社が選ばれる理由」について詳しくはこちら

 

熱処理・水素還元技術ナビの焼鈍(焼きなまし)の事例

溶着が起こりやすい焼鈍において、熱処理・水素還元技術ナビが、溶着が起きないよう実際に熱処理を行った事例をご紹介いたします。

熱処理事例①:パーマロイの磁気焼鈍
パーマロイシールド 磁気焼鈍

こちらはパーマロイの磁気焼鈍熱処理事例です。

 

Fe-Ni系磁性合金はパーマロイとよばれています。Fe-Ni合金の透磁率 が高いことを発見し、その後Fe-Ni合金の熱処理透磁率が非常に高くなることを発見したことから、・・・

 

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熱処理事例②:純鉄の磁気焼鈍
純鉄の応力除去

こちらは純鉄の磁気焼鈍事例になります。

 

電子部品に使用されているは磁性材料(磁石にくっつく材質)は磁場中では磁力を持ち、それが無くなると元に戻る性質があります。

 

これを利用したのが電磁石で、多くの電子部品、製品に使用されています。部品加工によって磁化することを・・・

 

>>詳しくはこちら

熱処理事例③:電磁鋼板の磁気焼鈍処理(窒素雰囲気熱処理)
電磁鋼板 窒素雰囲気処理 (1)

こちらは、電磁鋼板の磁気焼鈍事例になります。

 

電磁鋼板は、鉄の磁気特性を活かした鋼板で、機能材料としての役割を果たしています。 磁性材料は大きく分けて、全方向に同じ磁気特性を持つ「等方性磁石」と、特定の方向で優れた特性を持つ「異方性磁石」があります。

 

電磁鋼板は、完全な等方性磁石ではなく、ある程度の異方性を伴う磁性材料です。

そんな電磁鋼板ですが・・・

 

 

熱処理事例④:パーメンジュールの磁気焼鈍
パーメンジュール磁気焼鈍

こちらの製品は、パーメンジュールの磁気焼鈍事例になります。

 

パーメンジュールは鉄とコバルトを1:1の割合で混合した合金です。

 

49Fe-49Co-2Vは軟鉄強磁性合金で、高い磁束飽和密度が特長です。

※磁束密度が高いとは、面積あたりの磁力が強いことを意味します。

 

これにより、小さな部品で大きな力を発揮し、製品の小型化に貢献できます。実際、パーメンジュールは・・・

 

 

熱処理事例⑤:電磁ステンレスの磁気焼鈍
電磁ステンレス

こちらは電磁ステンレスを磁気焼鈍した熱処理事例です。

 

電磁ステンレス鋼はクロムを10~20%含むフェライト系ステンレス鋼をベースとしてシリコンやアルミニウム等を適量添加することにより安定した磁気特性や高固有抵抗を得られる材質です。

 

用途は非常に広範囲で、軟磁性材料として使用されるため応答性が良く、少ない電力で高い駆動力が得られる材料です。

 

具体的には・・・

 

 

熱処理事例⑥:フェライト系ステンレスの磁気焼鈍処理
SUS430 磁気焼鈍処理

こちらはフェライト系ステンレスの磁気焼鈍処理の事例です。

 

フェライト系ステンレスには、ステンレス鋼とSUS430などが代表的ですが、JIS規 格には磁気特性の規定がありません

 

このため、磁気的な特性要求が緩い場合は、汎用のSUS430が用いられていることもありますが、高精度な制御が必要な機器向けには、磁気特性の厳しい品質管理が求められるため磁気焼鈍部品として使用されることはあまりありません。

 

一方で、フェライト系ステンレスは軟磁性材料よりも熱処理後の硬度があり・・・

 

 

熱処理事例⑦:ナノ結晶磁性体の磁気焼鈍処理
ナノ結晶磁性体の熱処理

こちらは、ナノ結晶磁性体の磁気焼鈍処理事例になります。

 

ナノ結晶を含むアモルファス合金は、軟磁性材料としての特性を持っています。フェライト材料と比較すると、透磁率が3倍、飽和磁束密度が2.5倍となり、小さなサイズで大きなインダクタンスを実現します。

 

この特性は、電子回路において電圧を制御し、ノイズを除去して電流を安定させるなど、電子機器において重要な役割を果たしています。 技術的には、電気機器の小型化や損失の低減に貢献しており・・・

 

 

熱処理事例⑧:アモルファス合金の磁気焼鈍
アモルファス合金 磁気焼鈍

こちらは、アモルファス合金の不活性ガスによる雰囲気熱処理の事例になります。

 

アモルファス合金のアモルファスとは、原子や分子が不規則に密集している状態のことを指します。

 

特に、アモルファス合金の組成には以下のものがあります:「Fe、Co、Niなどの3d強磁性遷移元素」と「Si、Bなどのガラス化元素」はリボンや細線に、 「Fe、Co、Niなどの3d強磁性遷移元素」と「Zr、Ti、Nb、Taなどの遷移金属」は薄膜形成に使用されます。 

 

これらは、結晶構造が形成される前に・・・

 

 

熱処理事例⑨:光輝焼鈍処理
光輝焼鈍処理

こちらは光輝焼鈍を行った熱処理事例です。

 

光輝焼鈍とは加工・溶接などで生じる酸化を元の銀面に戻す熱処理を指します。

 

また、それと同時に残留応力を除去するのが目的で、最終仕上げ前に行われます。特に還元力のある水素雰囲気中で行うこと加工前以上に光輝に仕上げることが可能です。

 

この工程はとても重要で・・・

 

 

熱処理事例⑩:真鍮の熱処理

こちらは真鍮を熱処理した事例になります。

 

冷間加工のままの加工部品は使用中または保管中に割れる置き割れ(時期割れ)が発生する可能性がある点には注意が必要です。 

 

これは弾性的な内部応力の残留が原因で、特に棒やパイプなどの引抜加工部品では発生しやすくなります。

 

また、加工内部応力のなかにアンモニアなどの成分が要因で割れを起こしてしまう場合もあり・・・

 

 

熱処理事例⑪:銅ガスケットの焼きなまし
銅ガスケット 焼きなまし2

こちらは、銅のガスケットを焼きなましした熱処理事例です。

 

銅は貴金属の中でも最も使用されている非鉄金属です。特に耐熱性、加工精度の高さ、収縮性などの特性から、幅広い分野での取り扱いがあります。

 

その中でも焼きなましをした銅は、特に自動車関連ではガスケット、パッキン、リベットといった部品で使用されます。

 

加工すると目的以上に硬化するため、熱処理により・・・

 

 

熱処理事例⑫:ステンレスの応力除去焼鈍
ステンレスの応力除去焼鈍

こちらはステンレスの応力除去焼鈍を行った熱処理事例です。

 

オーステナイト系ステンレスは耐食性を主眼とした目的でつくられ、最も多用されている鋼種です。

 

耐食性を常温でも維持するため一般的には固溶化熱処理を行いますが、硬度が母材の半分以下になり、 伸び率も上がるため、精度の高い製品加工の工程を困難にしてしまう可能性があります。

 

しかし、このよな問題は応力除去焼鈍を行うことで解決することができます。

 

固溶化温度よりやや低い応力除去焼鈍処理を行うことで、内部応力の緩和や・・・

 

 

熱処理事例⑬:ハステロイの応力除去焼鈍
ハステロイ 応力除去

こちらはハステロイ(ALLOY22)の応力除去焼鈍を行った事例です。

 

ハステロイは高ニッケル、高クロム、モリブデン合金でタングステンも含有しています。

 

特に腐食に強く、酸化酸や酸化条件下での耐腐食性は大変優れている合金です。ただし、難加工材と呼ばれるハステロイを製品化するのはその通り困難を要します。

 

そのため、加工途中で応力を除去する応力除去が施されることがあります。熱処理により応力が解放され・・・

 

 

熱処理事例⑭:アルミニウムの応力除去焼鈍
アルミ6063 応力除去

こちらは、A6063を応力除去焼鈍した熱処理事例です。

 

A6063はマグネシウムとケイ素を添加したAl-Mg-Si系合金のアルミニウムです。この合金は加工性が良く、耐食性にも優れ、押出し加工性も高い特性を持ち合わせています。

 

今回はそのようなA6063を応力除去焼鈍を行うことで、最終仕上げ前の高精度加工を実現しました。

 焼鈍の温度は390~420℃、保持時間は長めに設け、ゆっくりと冷却する(炉冷)ことで・・・

 

    

溶着が発生しない熱処理、焼鈍のことなら、熱処理・水素還元技術ナビにお任せ!

溶着でお困りの際は熱処理・水素還元技術ナビでを運営しておりますサーマル化工株式会社までお気軽にお問い合わせください。

 

■ 熱処理・水素還元技術ナビの特徴

熱処理・水素還元技術ナビは、難易度の高い精密部品の各種熱処理に対応可能な熱処理のプロフェッショナルです。一般的な焼鈍から、純水素・特殊ガスでの熱処理を、1個から最大100時間の長時間行うことができます。

近年注目されている金属粉末の水素吸蔵によるリサイクル処理についても対応可能です。

 

■ 研究・開発支援実績が多数

熱処理・水素還元技術ナビを運営しておりますサーマル化工では、研究開発の試験案件を事業の核と考えており、本日に至るまで各業界のメーカー様をはじめとして様々な研究・開発支援を行ってきました。

正確な昇温、安定した保持時間、築炉よる緩やかな降温など試験目的によって、ご希望沿ったヒートパターンのご提案が可能です。

 

■ お客様からいただくよくある質問

実際にお客様からいただいたご質問のうち、特によくいただく質問をご紹介します!

 

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