技術コラム
2024.07.02
- 技術提案
- 焼鈍
【技術提案】最適な条件で磁気焼鈍を行い、音質改善を実現!
目次
今回の技術提案の要約
今回ご紹介するのは、磁気焼鈍を行うことで、ヘッドホンやイヤホン、またレコードプレーヤーのカートリッジなどの音響機器(オーディオ機器)の磁気回路を改善し、安定した高品質な出力やお客様の求める音の立ち上がりなどを実現した、音質改善の技術提案事例になります。
磁気回路を改善し、優れた出力を行うには、磁気回路を構成する材質(金属)の透磁性が重要になります。
※透磁性:物質の磁化のしやすさを数値で表わしたもの。透磁性が高い=磁場で磁化されやすく、磁場から取り除くと磁力を持たなくなる。
磁気焼鈍を通じて、この透磁性を調整することで、お客様の求める音の品質や音の立ち上がりを実現することができます。
ただし、求める音を実現するための透磁性(透磁率)とはどのようなものか、また必要な透磁性(透磁率)を実現するための最適な熱処理条件(熱処理温度、熱処理時間)はどのようなものか、そこには非常に専門的な知識と経験が求められます。
本コラムでは、そのような求める音質を実現した磁気焼鈍について詳しく解説いたします。本記事の下部で、Before、After形式で詳しく解説しておりますので、是非最後までご覧ください。
また、今回ご紹介するような研究開発について、熱処理・水素還元技術ナビでは過去多数実績がございます。熱処理・水素還元技術ナビの研究開発については、下記ページでまとめてご紹介しておりますので、是非ご覧ください!
その他、熱処理・水素還元技術ナビが行う磁気焼鈍処理については、下記ページで詳しく解説しておりますので、是非合わせてご覧ください!
磁気焼鈍の目的や適した材料など、磁気焼鈍の基礎的な情報をお探しの方は、下記記事をご確認ください!
>>「磁気焼鈍とは?磁気焼鈍の目的や磁気焼鈍に適した材質を解説!」はこちら
Before:お困りごと
今回ご相談いただいたお客様は、音響機器の磁気回路を形成するのに、純鉄(純鉄は透磁性が高く磁束を高密度で維持できる材質)を使用していましたが、この純鉄が加工成形時に塑性変形が起き、結晶構造が歪められたため、透磁性が大きく損なわれてしまった状態にありました。
そのため、十分な磁気特性を発揮できず、またそれによる求める音質を実現できず悩んでおり、熱処理・水素還元技術ナビにご相談いただきました。
After:ご提案内容
歪んでしまった結晶構造を再生するには、熱処理の中でも焼鈍という処理が必要です。更にその中でも、透磁性を回復させるために行う焼鈍を磁気焼鈍と言います。
加工成形時に塑性変形が起き、結晶構造が歪められた純鉄を、適切な条件で磁気焼鈍することで、結晶構造を再生し、透磁性を回復させるこで、結果として安定した高品質な出力やお客様の求める音の立ち上がりなどを実現いたしました。
汎用的な磁気焼鈍では結晶構造の歪みは完全には除去出来ず、透磁性も完全には回復しませんが、パーツの材質や大きさ形状等に合わせた最適な熱処理条件で磁気焼鈍を行うことで、優れた磁気性能を引き出すことができます。
この適切な熱処理条件=オーダーメイドのヒートパターンニングのご提案から実際の熱処理までできるのが、熱処理・水素還元技術ナビの強みでございます。
最適な特性が得られるよう、焼鈍温度、焼鈍環境、加熱時間、加熱率、冷却率など磁気焼鈍の条件の最適化を行わせていただきます。
今回行った磁気焼鈍を通じて、理想的な磁気回路を実現し、歪の無い優れた解像力、のびやかな広域の表現、音場空間の広がり、音質の全てが飛躍的に向上させることができました。
熱処理・水素還元技術ナビの磁気焼鈍事例
今回ご紹介したような磁気焼鈍ですが、熱処理・水素還元技術ナビでは今回の事例以外にもそ磁気特性の改善を目的に熱処理を行った実績が多数ございます。
熱処理・水素還元技術ナビが実際に行った熱処理事例を以下でご紹介いたしますので、是非こちらも合わせて、ご覧ください!
熱処理事例①:パーマロイの磁気焼鈍
こちらはパーマロイの磁気焼鈍熱処理事例です。
Fe-Ni系磁性合金はパーマロイとよばれています。Fe-Ni合金の透磁率 が高いことを発見し、その後Fe-Ni合金の熱処理透磁率が非常に高くなることを発見したことから、・・・
熱処理事例②:純鉄の磁気焼鈍
こちらは純鉄の磁気焼鈍事例になります。
電子部品に使用されているは磁性材料(磁石にくっつく材質)は磁場中では磁力を持ち、それが無くなると元に戻る性質があります。
これを利用したのが電磁石で、多くの電子部品、製品に使用されています。部品加工によって磁化することを・・・
熱処理事例③:電磁鋼板の磁気焼鈍処理(窒素雰囲気熱処理)
熱処理事例④:パーメンジュールの磁気焼鈍
こちらの製品は、パーメンジュールの磁気焼鈍事例になります。
パーメンジュールは鉄とコバルトを1:1の割合で混合した合金です。
49Fe-49Co-2Vは軟鉄強磁性合金で、高い磁束飽和密度が特長です。
※磁束密度が高いとは、面積あたりの磁力が強いことを意味します。
これにより、小さな部品で大きな力を発揮し、製品の小型化に貢献できます。実際、パーメンジュールは・・・
熱処理事例⑤:電磁ステンレスの磁気焼鈍
こちらは電磁ステンレスを磁気焼鈍した熱処理事例です。
電磁ステンレス鋼はクロムを10~20%含むフェライト系ステンレス鋼をベースとしてシリコンやアルミニウム等を適量添加することにより安定した磁気特性や高固有抵抗を得られる材質です。
用途は非常に広範囲で、軟磁性材料として使用されるため応答性が良く、少ない電力で高い駆動力が得られる材料です。
具体的には・・・
熱処理事例⑥:フェライト系ステンレスの磁気焼鈍処理
こちらはフェライト系ステンレスの磁気焼鈍処理の事例です。
フェライト系ステンレスには、ステンレス鋼とSUS430などが代表的ですが、JIS規 格には磁気特性の規定がありません。
このため、磁気的な特性要求が緩い場合は、汎用のSUS430が用いられていることもありますが、高精度な制御が必要な機器向けには、磁気特性の厳しい品質管理が求められるため磁気焼鈍部品として使用されることはあまりありません。
一方で、フェライト系ステンレスは軟磁性材料よりも熱処理後の硬度があり・・・
熱処理事例⑦:ナノ結晶磁性体の磁気焼鈍処理
こちらは、ナノ結晶磁性体の磁気焼鈍処理事例になります。
ナノ結晶を含むアモルファス合金は、軟磁性材料としての特性を持っています。フェライト材料と比較すると、透磁率が3倍、飽和磁束密度が2.5倍となり、小さなサイズで大きなインダクタンスを実現します。
この特性は、電子回路において電圧を制御し、ノイズを除去して電流を安定させるなど、電子機器において重要な役割を果たしています。 技術的には、電気機器の小型化や損失の低減に貢献しており・・・
熱処理事例⑧:アモルファス合金の磁気焼鈍
こちらは、アモルファス合金の不活性ガスによる雰囲気熱処理の事例になります。
アモルファス合金のアモルファスとは、原子や分子が不規則に密集している状態のことを指します。
特に、アモルファス合金の組成には以下のものがあります:「Fe、Co、Niなどの3d強磁性遷移元素」と「Si、Bなどのガラス化元素」はリボンや細線に、 「Fe、Co、Niなどの3d強磁性遷移元素」と「Zr、Ti、Nb、Taなどの遷移金属」は薄膜形成に使用されます。
これらは、結晶構造が形成される前に・・・
磁気焼鈍のことなら、熱処理・水素還元技術ナビにお任せ!
磁気焼鈍でお困りの際は熱処理・水素還元技術ナビでを運営しておりますサーマル化工株式会社までお気軽にお問い合わせください。
■ 熱処理・水素還元技術ナビの特徴
熱処理・水素還元技術ナビは、難易度の高い精密部品の各種熱処理に対応可能な熱処理のプロフェッショナルです。一般的な焼鈍から、純水素・特殊ガスでの熱処理を、1個から最大100時間の長時間行うことができます。
近年注目されている金属粉末の水素吸蔵によるリサイクル処理についても対応可能です。
■ 研究・開発支援実績が多数
熱処理・水素還元技術ナビを運営しておりますサーマル化工では、研究開発の試験案件を事業の核と考えており、本日に至るまで各業界のメーカー様をはじめとして様々な研究・開発支援を行ってきました。
正確な昇温、安定した保持時間、築炉よる緩やかな降温など試験目的によって、ご希望沿ったヒートパターンのご提案が可能です。
■ お客様からいただくよくある質問
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