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技術コラム

2024.10.02

  • 技術提案
  • 焼鈍

【技術提案】車載センサーカメラへの応力除去焼鈍で要求硬度を実現、磁気焼鈍で反応速度を改善!

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今回の技術提案の要約

今回ご紹介するのは、車載センサーカメラにおけるカメラフレームに対して応力除去焼鈍を行い、歪みをとることで、カメラが対象を追尾するのに必要なフレームの柔らかさを実現。

更に、センサー部に対して磁気焼鈍を行うことで、車を緊急停止させる際のブレーキを反応させるセンサー、あるいは危険信号を知らせるアラートのセンサーの反応速度を改善することができた技術提案事例になります。

例えば、カメラが対象物を自動追尾する際、カメラはまるで人間の目のように柔軟に動きますが、この際カメラフレームが硬すぎてしまうと、動きに耐え切れず割れてしまうことがあります。

 

しかし、応力除去焼鈍を行うことで、求める柔らかさを実現することができるため、この割れを防止すすることが可能です。

応力除去焼鈍については下記でも詳しく解説しております。

>>熱処理技術サービス「応力除去焼鈍」について詳しくはこちら

また、センサーについても磁気焼鈍を行うことで、センサーの反応速度を改善することができます。磁気焼鈍とは、内部歪み(磁化)を元に戻すことを目的としていますが、それによりさまざまな分野における電子制御部品の機能を向上させることができます。

磁気焼鈍による電子制御部品の機能性向上のからくりについては、下記記事にて詳しく解説しておりますので、是非こちらをご覧ください

>>磁気焼鈍とは?磁気焼鈍の目的や磁気焼鈍に適した材質を解説!

また、合わせて磁気焼鈍による音質改善を行った事例もございます。

>>【技術提案】最適な条件で磁気焼鈍を行い、音質改善を実現!

このような磁気焼鈍ですが、求める反応速度を実現するには、必要な透磁性(透磁率)を算定、また必要な透磁性(透磁率)を実現するための最適な熱処理条件(熱処理温度、熱処理時間)はどのようなものかを判断する、そこには非常に専門的な知識と経験が求められます。

本コラムでは、そのような求める硬度を実現するための応力除去焼鈍や、求める反応速度を実現するための磁気焼鈍について詳しく解説いたします。本記事の下部で、Before、After形式で詳しく解説しておりますので、是非最後までご覧ください。

また、今回ご紹介するような研究開発について、熱処理・水素還元技術ナビでは過去多数実績がございます。熱処理・水素還元技術ナビの研究開発については、下記ページでまとめてご紹介しておりますので、是非ご覧ください!

>>「研究開発・支援」について詳しくはこちら

その他、熱処理・水素還元技術ナビが行う磁気焼鈍処理について、下記ページで詳しく解説しております。是非合わせてご覧ください!

>>「熱処理技術サービス:磁気焼鈍」はこちら

  

Before:お困りごと

今回ご相談いただいたお客様は、車載センサーカメラに関して、カメラフレームの応力除去焼鈍、センサー部分の磁気焼鈍どちらにも一貫で対応できる熱処理業者を探しておりました。

応力除去焼鈍であれば、熱処理の前後で、求める硬度変化が微細なため、硬度計で測っても分かりにくく、非常に専門的な知識と経験が必要になり、

また磁気焼鈍についても見た目の変化がない熱処理になりますので、各熱処理の前後工程について、すべて社内にて一貫対応、一括管理できる熱処理業者である必要がありました。

更に、先ほどご紹介したように、応力除去焼鈍、磁気焼鈍それぞれで求める要求、精度に応えるための、最適な熱処理条件を提案できる焼鈍の知識、経験が豊富な熱処理業者をお探しとのことで、熱処理・水素還元技術ナビにご相談がございました。

 

After:ご提案内容

まず、車載センサーカメラ部分に関して、カメラがまるで人間の目のように対象を自動追尾を行うため、カメラの動きに耐えることのできる柔らかいカメラフレームが必要でした。

そこで、カメラフレームに対しては、割れが発生しない適切な硬度を実現するための応力除去焼鈍を行いました。

 

この熱処理前後での硬度変化が非常に微細ではありますが、応力除去焼鈍の知識と経験が豊富な熱処理・水素還元技術ナビだからこそ最適な熱処理を行うことができました。 

 

※画像はマイクロビッカースによる硬度測定の様子

また、車載センサー部分については、車を緊急停止させる際のブレーキを反応させるセンサーと危険信号を知らせるアラートのセンサーの2種類ありましたが、それぞれ命に関係する重要な機構ですので、車載用カメラで撮影した情報をセンサーに伝達し、すばやくブレーキ等の次の機構に伝達するには、この反応速度が非常に重要になります。

この反応速度に関わるのが、磁気焼鈍になります。磁気焼鈍による内部歪みを取り除くことで、電子制御部品の機能を向上させることができます。

ただし汎用的な磁気焼鈍では結晶構造の歪みは完全には除去出来ず、透磁性も完全には回復しませんが、パーツの材質や大きさ形状等に合わせた最適な熱処理条件で磁気焼鈍を行うことで、優れた磁気性能を引き出すことができます。

この適切な熱処理条件=オーダーメイドのヒートパターンニングのご提案から実際の熱処理までできるのが、熱処理・水素還元技術ナビの強みでございます。

 

最適な特性が得られるよう、焼鈍温度、焼鈍環境、加熱時間、加熱率、冷却率など磁気焼鈍の条件の最適化を行わせていただきます。

 

また、先ほどご紹介したように磁気焼鈍は見た目の変化がない熱処理になりますので、各熱処理の前後工程について、すべて社内にて一貫対応、一括管理できる熱処理・水素還元技術ナビだからこそ、安心してご依頼いただけました。

今回行った応力除去焼鈍、磁気焼鈍を通じて、カメラフレームの求める柔らさの実現、またセンサー部分の反応速度改善を実現いたしました。

 

熱処理・水素還元技術ナビの応力除去焼鈍・磁気焼鈍事例

今回ご紹介したような応力除去焼鈍と磁気焼鈍ですが、熱処理・水素還元技術ナビでは今回の事例以外にも多数実績がございます。

熱処理・水素還元技術ナビが実際に行った熱処理事例を以下でご紹介いたしますので、是非こちらも合わせて、ご覧ください!

 

熱処理事例①:パーマロイの磁気焼鈍
パーマロイシールド 磁気焼鈍

こちらはパーマロイの磁気焼鈍熱処理事例です。

 

Fe-Ni系磁性合金はパーマロイとよばれています。Fe-Ni合金の透磁率 が高いことを発見し、その後Fe-Ni合金の熱処理透磁率が非常に高くなることを発見したことから、・・・

 

>>詳しくはこちら

 

熱処理事例②:純鉄の磁気焼鈍
純鉄の応力除去

こちらは純鉄の磁気焼鈍事例になります。

 

電子部品に使用されているは磁性材料(磁石にくっつく材質)は磁場中では磁力を持ち、それが無くなると元に戻る性質があります。

 

これを利用したのが電磁石で、多くの電子部品、製品に使用されています。部品加工によって磁化することを・・・

 

>>詳しくはこちら

 

熱処理事例③:電磁鋼板の磁気焼鈍処理(窒素雰囲気熱処理)
電磁鋼板 窒素雰囲気処理 (1)

こちらは、電磁鋼板の磁気焼鈍事例になります。

 

電磁鋼板は、鉄の磁気特性を活かした鋼板で、機能材料としての役割を果たしています。 磁性材料は大きく分けて、全方向に同じ磁気特性を持つ「等方性磁石」と、特定の方向で優れた特性を持つ「異方性磁石」があります。

 

電磁鋼板は、完全な等方性磁石ではなく、ある程度の異方性を伴う磁性材料です。

そんな電磁鋼板ですが・・・

 

 

熱処理事例④:パーメンジュールの磁気焼鈍
パーメンジュール磁気焼鈍

こちらの製品は、パーメンジュールの磁気焼鈍事例になります。

 

パーメンジュールは鉄とコバルトを1:1の割合で混合した合金です。

 

49Fe-49Co-2Vは軟鉄強磁性合金で、高い磁束飽和密度が特長です。

※磁束密度が高いとは、面積あたりの磁力が強いことを意味します。

 

これにより、小さな部品で大きな力を発揮し、製品の小型化に貢献できます。実際、パーメンジュールは・・・

 

 

熱処理事例⑤:電磁ステンレスの磁気焼鈍
電磁ステンレス

こちらは電磁ステンレスを磁気焼鈍した熱処理事例です。

 

電磁ステンレス鋼はクロムを10~20%含むフェライト系ステンレス鋼をベースとしてシリコンやアルミニウム等を適量添加することにより安定した磁気特性や高固有抵抗を得られる材質です。

 

用途は非常に広範囲で、軟磁性材料として使用されるため応答性が良く、少ない電力で高い駆動力が得られる材料です。

 

具体的には・・・

 

 

熱処理事例⑥:フェライト系ステンレスの磁気焼鈍処理
SUS430 磁気焼鈍処理

こちらはフェライト系ステンレスの磁気焼鈍処理の事例です。

 

フェライト系ステンレスには、ステンレス鋼とSUS430などが代表的ですが、JIS規 格には磁気特性の規定がありません

 

このため、磁気的な特性要求が緩い場合は、汎用のSUS430が用いられていることもありますが、高精度な制御が必要な機器向けには、磁気特性の厳しい品質管理が求められるため磁気焼鈍部品として使用されることはあまりありません。

 

一方で、フェライト系ステンレスは軟磁性材料よりも熱処理後の硬度があり・・・

 

 

熱処理事例⑦:ナノ結晶磁性体の磁気焼鈍処理
ナノ結晶磁性体の熱処理

こちらは、ナノ結晶磁性体の磁気焼鈍処理事例になります。

 

ナノ結晶を含むアモルファス合金は、軟磁性材料としての特性を持っています。フェライト材料と比較すると、透磁率が3倍、飽和磁束密度が2.5倍となり、小さなサイズで大きなインダクタンスを実現します。

 

この特性は、電子回路において電圧を制御し、ノイズを除去して電流を安定させるなど、電子機器において重要な役割を果たしています。 技術的には、電気機器の小型化や損失の低減に貢献しており・・・

 

 

熱処理事例⑧:アモルファス合金の磁気焼鈍
アモルファス合金 磁気焼鈍

こちらは、アモルファス合金の不活性ガスによる雰囲気熱処理の事例になります。

 

アモルファス合金のアモルファスとは、原子や分子が不規則に密集している状態のことを指します。

 

特に、アモルファス合金の組成には以下のものがあります:「Fe、Co、Niなどの3d強磁性遷移元素」と「Si、Bなどのガラス化元素」はリボンや細線に、 「Fe、Co、Niなどの3d強磁性遷移元素」と「Zr、Ti、Nb、Taなどの遷移金属」は薄膜形成に使用されます。 

 

これらは、結晶構造が形成される前に・・・

 

 

熱処理事例⑨:ステンレスの応力除去焼鈍

こちらはステンレスの応力除去焼鈍を行った熱処理事例です。

 

オーステナイト系ステンレスは耐食性を主眼とした目的でつくられ、最も多用されている鋼種です。

 

耐食性を常温でも維持するため一般的には固溶化熱処理を行いますが、硬度が母材の半分以下になり、 伸び率も上がるため、精度の高い製品加工の工程を困難にしてしまう可能性があります。

 

しかし、このよな問題は応力除去焼鈍を行うことで解決することができます。

 

固溶化温度よりやや低い応力除去焼鈍処理を行うことで、内部応力の緩和や・・・

 

 

熱処理事例⑩:ハステロイの応力除去焼鈍
ハステロイ 応力除去

こちらはハステロイ(ALLOY22)の応力除去焼鈍を行った事例です。

 

ハステロイは高ニッケル、高クロム、モリブデン合金でタングステンも含有しています。

 

特に腐食に強く、酸化酸や酸化条件下での耐腐食性は大変優れている合金です。ただし、難加工材と呼ばれるハステロイを製品化するのはその通り困難を要します。

 

そのため、加工途中で応力を除去する応力除去が施されることがあります。熱処理により応力が解放され・・・

 

 

熱処理事例⑪:アルミニウムの応力除去焼鈍
アルミ6063 応力除去

こちらは、A6063を応力除去焼鈍した熱処理事例です。

 

A6063はマグネシウムとケイ素を添加したAl-Mg-Si系合金のアルミニウムです。この合金は加工性が良く、耐食性にも優れ、押出し加工性も高い特性を持ち合わせています。

 

今回はそのようなA6063を応力除去焼鈍を行うことで、最終仕上げ前の高精度加工を実現しました。

 焼鈍の温度は390~420℃、保持時間は長めに設け、ゆっくりと冷却する(炉冷)ことで・・・

 

 

応力除去焼鈍・磁気焼鈍のことなら、熱処理・水素還元技術ナビにお任せ!

応力除去焼鈍・磁気焼鈍でお困りの際は熱処理・水素還元技術ナビでを運営しておりますサーマル化工株式会社までお気軽にお問い合わせください。

■ 熱処理・水素還元技術ナビの特徴

熱処理・水素還元技術ナビは、難易度の高い精密部品の各種熱処理に対応可能な熱処理のプロフェッショナルです。一般的な焼鈍から、純水素・特殊ガスでの熱処理を、1個から最大100時間の長時間行うことができます。

近年注目されている金属粉末の水素吸蔵によるリサイクル処理についても対応可能です。

 

■ 研究・開発支援実績が多数

熱処理・水素還元技術ナビを運営しておりますサーマル化工では、研究開発の試験案件を事業の核と考えており、本日に至るまで各業界のメーカー様をはじめとして様々な研究・開発支援を行ってきました。

正確な昇温、安定した保持時間、築炉よる緩やかな降温など試験目的によって、ご希望沿ったヒートパターンのご提案が可能です。

 

■ お客様からいただくよくある質問

実際にお客様からいただいたご質問のうち、特によくいただく質問をご紹介します!

 

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